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はじめに

 

 話は1610年のオランダから始まる。オランダの神学教授ジェームス・アルミニウス(1560〜1609)が世を去った後、彼の教えは、後継者(アルミニウス主義者と呼ばれている)たちによって、アルミニウス主義の五特質としてまとめられた。

それまでオランダの教会は、他のヨーロッパのプロテスタント教会と同様に、はっきりした改革派の教義に基づく、ベルギー信条とハイデルベルク信仰問答を受け入れていた。しかしアルミニウス主義者達は、このオランダの教会の立場を変えようと試みた。彼らはアルミニウス主義の五特質を抗議文の形にして、オランダ議会に提出した。

このアルミニウス主義の五特質は次のようなものである。

 

 第1特質:人間の能力・自由意志

 人間は堕落(罪)による影響を受けているが、霊的な善悪の判断において善を選ぶことが出来る。このため、自らの力によって獲得した信仰を行使して、福音を受け入れ、救いに入ることが出来る。

 第2特質:条件的選び

 神は、福音に応答する人々を予知・予見して、彼らを選んだ。アルミニウス主義の第1特質によれば、生まれつきの人間は完全に堕落した状態にある訳ではない。各個人は自ら、自由意志の能力を行使して救われたいと願うことが出来る。救われたいと願うであろう人々を、神は過去において予知・予見し、選ばれた。

 第3特質:一般的贖罪、あるいは普遍的贖い

 キリストはすべての人を救うために死なれた。しかしキリストの死はすべての人が救われる希望をもたらしたに過ぎない。キリストの死によって神が罪人を赦すことが条件つきで可能になった。その条件とは罪人が自らの能力で信仰を持つことである。

 第4特質:救いにおいて、人間の意志によって制限された聖霊の働き

 聖霊は罪人をキリストに導く過程において、罪人の抵抗にあい、当初の目的を達成できないことがある。罪人の同意なしに、聖霊は罪人に命を与えることが出来ない。

 第5特質:恵みからの脱落

 一度救われた者でも、最終的には救いから脱落することもあり得る。これはアルミニウス主義神学の論理的かつ必然的結論である。つまりアルミニウス主義者の主張するように、もし人間が自己の救いにおける主導権を握っているのなら、救われるか救われないかという最終的結果についても人間は責任を負わなければならないからである。

 

 このアルミニウス主義の五特質はオランダ議会に提出され、1618年、国教会会議がドルトにおいて召集された。このドルト会議において、聖書に照らしてアルミニウス主義は検討された。会議は、ドルトにおいて、七ヵ月の間154回開かれ、最終的に、「アルミニウス主義と聖書の神の御言葉の教えとの間には、何らの一致点をも見出せない。」という結論に達したのである。そして、宗教改革において、フランス人の神学者ジョン・カルヴィン(1509〜1564年)によってまとめあげられ、組織化されて、はっきりと示された神学的立場が再確認され、アルミニウス主義の五特質に対するカルヴィン主義の五特質がドルト会議において、まとめあげられ提示された。それは以下に示す通りである。

 

 第1特質:人間の全的堕落・無能力

 第2特質:無条件的選び

 第3特質:特定的贖い(叉は、限定的贖罪)

 第4特質:聖霊の有効的召命(叉は、不可抗的恩恵)

 第5特質:聖徒の堅忍と保持

 

 すぐにわかるように、これらのカルヴィン主義の五特質はアルミニウス主義の五特質と正反対のことを主張している。

 人間はエデンの園において全く堕落した。それ故、人間には、自分自身を救うことが全く出来ない(全的堕落・無能力)。そして人間には自分自身を救うことが出来ない故に、神が人間を救われるのである。神が人間を救われる以上、神は、御自身の御心によって救おうと定めた人々を救われる(無条件的選び)。そして神が御自身の御心によって救いに定めた人々を、まさにその人々をキリストが十字架上の御業によって贖って下さったのである(特定的贖い)。キリストは救いに定められた人々のために死なれた。聖霊はその人々を妨げられることなく、有効的に、救いへと導き入れて下さる(聖霊の有効的召命)。このように、救いの働きは神によって始められた故に、最後まで神によって達成される。こうして、聖徒達は永遠の喜びに至る迄守られるのである(聖徒の堅忍)。

 

 これがカルヴィン主義の五特質と呼ばれている教理である。我らは、これから、このカルヴィン主義の五特質の一つ一つを詳しく検討し、この教理が、神の御言葉に堅く根ざしたものであり、「聖徒に一度伝えられた信仰」のために、不屈の戦いを戦い通してきた我らの信仰の父祖達によって、しっかりと護持されて来たことを検証する。こうして我らに伝えられた信仰のために我らも又真剣に戦い続けねばならないのである。C.H.スポルジョンは言う。「私が説くのは何か目新しい教理では決してない。このカルヴィン主義というニックネームで呼ばれている古くから伝えられて来た強固な教理を私は宣べ伝える。この教理こそ、まさしく、キリスト・イエスにおいて神が我らに啓示された真理なのである。」我らは、ここでスポルジョンが言わんとしたことを、これからの学びで、よく理解することが出来るようになるであろう。

 

序言

はじめに

第1特質:全的堕落・無能力

第2特質:無条件的選び

第3特質:特定的贖い(叉は限定的贖罪)

第4特質:不可抗的恩恵(聖霊の有効的召命)

第5特質:聖徒の堅忍と保持

結論

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「神の主権による恩寵の教理」(英語タイトル"The Five Points Of Calvinism")はBanner Of Truth Trust( Edinburgh, Scotland )と聖書真理刊行(Scripture Truth Publications)の許可をいただいて掲載しております。

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